お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「最初の話ぶりだと、長男の方とのお見合いだと思っていたんだがね。まぁ、どちらにしてもしっかりした家庭の息子さんだということは確かだ。小児外科医というくらいだから、きっとすごく優しく穏やかな青年だろうよ」
「そんな人なら恋人のひとりやふたり、いるんじゃないのかな。きっと今頃迷惑してると思う」
親が勝手にとりつけた見合い話。それも庶民を代表するような弁当屋の娘では、鼻先で笑われて終わりではないか。
「そんな人がいたら、こんな話にはならないだろう?」
たしかにそれは言えるが、威厳のある院長の父親から言われて断れなかった可能性もある。それに、もしかしたら恋人がいながら見合いをする男がいないとも言い切れない。
過去の苦い経験が、千花を疑心暗鬼にさせる。
「あ、そうだ。さっき送られてきた写真、写真……」
そう言いながら幸助はスマホを手に取り、操作を始める。そして、「おお、これだこれ」と言いながら、テーブルに身を乗り出して千花に手渡した。
写真を見るだけなら。千花はそう思ってタッチスクリーンに目を落とす。