お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「来たって、私がですか?」
大きな目でギロッと睨まれた神崎は、すくみ上るようにして「すすすすみませんっ! すぐに戻ります!」と大慌てで踵を返す。
「千花さん、それじゃまた!」
タタタと駆け出した神崎に、すかさず美代から叱責が飛ぶ。
「廊下は走らない!」
「は、はいっ!」
神崎は急ブレーキで足を止め、まるで小学生のようにピッと背筋を伸ばして行進するかのように立ち去って行った。
そんな様子を千花はクスクスと笑いながら見守る。
「まったく、いつになったら落ち着いた医師になるでしょうかね」
ひとり言のように呟いた美代は、厳しい表情を解いてから千花に微笑みかけた。
「主人がいつもお世話になっております」
いつになっても照れ臭い挨拶は、千花の頬をほんのりと赤く染める。