お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「それじゃ私も仕事がまだ残っておりますので」
美代は最後ににっこりと微笑んで、千花に頭を下げながら歩いて行った。
(さてと、私も修矢さんのところに行かなくちゃ)
美代を見送り、千花も再び足を進める。
そして、小児外科の受付を通り過ぎ、医局まであと少しというときだった。十数メートル先の通路を横切った修矢に気づき、足を踏みだした千花がブレーキを掛ける。
「パパ!」
何度もそう呼びながら、五歳くらいの女の子が修矢に駆け寄ったのだ。
(……パパ? 今たしかにそう言ったよね。……どういうこと?)
修矢は女の子に気づき、その場に膝を突いた。優しい笑顔を浮かべ、肩まで伸びた髪に触れる。
千花の心臓が嫌な音を立てた。修矢が子供に向ける穏やかな眼差しは見慣れている。
でも、それはいつもとはどこか違って見えた。