お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

わけがわからず千花が不安に駆られていると、その女の子のあとをゆっくりと歩いてきた女性がいた。
長い黒髪の長身。横顔からでも美しいことがわかる女性は、しなやかな身のこなしで修矢と女の子に近づく。


「優奈(ゆうな)、病院を駆け回ったらだめよ。パパを困らせないでね」


再び耳をついた〝パパ〟に、千花はくらりと眩暈を感じる。しかも、修矢は優奈という女の子だけではなく、その女性にもやわらかな笑みを向けた。


「診察は終わったのか?」
「ええ。たった今。優奈が『パパのところに寄りたい』って言うものだから。忙しいところ、ごめんね」
「いや、大丈夫だ」


修矢とその女性が微笑み合う。そこにはまるで、ほかの者を寄せ付けないような雰囲気があり、千花ですら近寄れない。

(どういう……ことなの……?)

一気に加速する鼓動が、千花の胸を絞めつける。全身から力が抜けて、今にもその場に座り込みたい気分だった。

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