お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
千花は、なんとはなしにある停留所で降りる。
するとそこは、立派な高層ビルが建ち並ぶオフィス街のようだった。
スーツ姿のサラリーマンやキャリアウーマンが颯爽と歩く中、大きな弁当箱の入ったバッグを抱える千花は、自分がなんだか場違いのように思えた。
こんなところを歩いていても気分が滅入るだけ。タクシーを捕まえて、どこか別の場所へ連れて行ってもらおう。
そう考えた千花が車道でタクシーを探して首を伸ばしていると。
「千花ちゃん?」
疑問形で千花に声をかけてきた男性がいた。
その声に振り向くと、そこには修矢の兄、一樹の姿があった。
ネクタイこそ着けているが、ネイビーのスリムなチノパンにベージュのジャケットという少しラフな格好。そうであっても洗練された印象を与えるのは、修矢に劣らない容姿のせいだろう。
「こんなところでどうしたんだ」
「あ、いえ……」
なんと答えたらいいのかわからず、千花が口ごもる。