お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「……ねぇ、お母さん、私、全然ダメみたい。昔からなにも変わらない」
「なに、どうしたの?」
「鈍感なの。よく通知表に書かれたでしょう? 〝ぼんやりしていることが多い〟って。本当にそれ。今も変わらないぼんやりさんなの」
人がなにを思っているのかも、なにを考え行動しているのかも、自分は気づかない。
三年前の二股もそう。
その集大成が今、千花の目の前にある修矢との結婚だ。
「そんなことないわよ。千花はぼんやりさんなんかじゃないわ」
千花が過去の失恋のことを絡めて言っていることに気づいたのか、美幸が必死に宥めようとする。
千花はその言葉に力なく笑うしかなかった。
「ごめん、私、自分の部屋に行くね。今夜は帰りたくないから、修矢さんにはお母さんから伝えておいて。紅茶ごちそうさま」
そう言うなり千花が立ち上がる。
「ちょっと、千花!」
美幸もその場で腰を浮かせたが、無理に千花を追ったり引き留めたりはしなかった。