お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
◇◇◇
それからしばらくしてインターフォンの鳴る音が千花の部屋にも聞こえてきた。
ベッドに座っていた千花の身体に緊張が走る。
(お母さん、ちゃんと下で引き留めてくれるかな……)
千花は、今はまだ修矢と話せるような気分ではない。今夜はこのままそっとしておいてほしかった。
ところが千花のそんな願いも虚しく、階段を上がってくる速いリズムの足音が聞こえてきた。この足音は美幸のものではない。
それに合わせて千花の鼓動も速く打ち始める。足音が千花の部屋の前でぴたりと止まったときには、ひと際大きく弾んだ。
「千花」
ノックと同時に修矢が千花の名前を呼ぶ。
千花は思わずドアに駆け寄り、ノブをギュッと強く握った。今はここを開けられたくはない。
「千花、ごめん。悪かった」
どのことに対する謝罪なのか、千花にはわかりようもない。
実は隠し子がいたことを言っているのか。婚姻届を出さずにいたことか。