お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
結婚からはじめよう
まだ夜が明けきらない午前五時。千花は物音を立てずに実家のマンションを出た。
空にはまだ月が浮かび、一月中旬のキンと冷えた空気が千花の身体を刺す。
昨夜、修矢が帰ってからずっと、千花はこれからのことを考えていた。
いつかきちんと修矢と話し合わなくてはならないのはわかっている。でも、今はまだ無理。
千花の考えはまとまらず、心も動揺したまま。そんな状態では、きっと取り乱してしまうだろうから。
千花は、もう少し考える猶予がほしかった。
今日、一月二十三日は千花の誕生日。
そんな日にこうして修矢から離れていくことが悲しかった。
昨日の昼から何も食べていないせいか、胃のあたりがムカムカする。かといって、なにかを食べる気力もない。
昨夜も、美幸が千花の大好物であるピーマンの肉詰めを作ってくれたが、結局食べずじまいだった。
マンションのエントランスを出て、ひとまず駅へ足を向ける。目的地は決まっていないが、とにかく気持ちを落ち着かせるために、ひとりの時間が千花には必要だった。
旅行の準備はなにひとつないが、現地調達すればいいだろうという安易な考えだ。財布があれば、まずは問題ない。