お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
そうして白い息を吐き出しながら千花が歩いていると、どこからかタタタッという駆け足のような足音が聞こえてきた。
(こんなに暗くて寒い中、ジョギングでもしてるのかな)
心の中でご苦労様と呟いたときだった。不意に手首を掴まれ、千花の心臓が止まりそうになる。
「キャッ……!」
短く悲鳴を上げたときには、何者かに抱き込まれていた。
(――ち、痴漢!?)
「だ、誰か――」
声を振り絞って助けを呼ぼうとした瞬間、「千花」という聞き覚えのある低い声が耳に届いた。修矢だったのだ。
(どうして修矢さんがここに!?)
驚くと同時に身体を反転させられ、千花が修矢と向かい合う。その顔はどこか苦しそうで、千花の胸が締めつけられた。
「予想したとおりだ」
「……なにがですか?」