お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

修矢は千花をゆっくりと引き離し、「寒いから車の中で話そう」と千花をマンションの近くに止めてある車まで連れて行った。

助手席に千花を座らせ、修矢も運転席に乗り込むと、真っすぐに千花を見た。


「優奈の父親は、亡くなった俺の親友だ」
「……修矢さんの、亡くなった親友?」


そういえば以前、千花はちらっとだけその親友の話を聞いたことはあった。友人が五年ほど前に亡くなったと。


「そいつは司って言って、美和子と大学時代から付き合っていたんだ」


ポツリポツリと修矢が話し始める。

司と美和子は、修矢を介して知り合ったという。お互いにひと目ぼれ。会って一週間と経たないうちに恋人になったらしい。

ところが、司は二十六歳という若さで交通事故により急逝。美和子のお腹に子供がいることがわかったのは、それから数ヶ月が経ったころだという。

周りの反対を押し切り、美和子はシングルマザーになることを決めた。そうして生まれた子供には心臓に先天性の病気があり、すぐにも移植が必要な状態だった。

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