お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

奪い返そうと手を伸ばすが、歩きだした一樹はひらりと身をかわして千花をよける。


「人の厚意は素直に受けた方がいいぞー」


(……ま、いっか。お願いしちゃおう)

そう言いながらずんずん足を進める一樹を千花は追うほかになかった。


歩くこと二分。到着したコインパーキングには、輝きを放つ一樹の真っ赤な車があった。
一樹は後部座席に荷物を積み、助手席のドアを開けて千花を乗せる。

ここまで来てしまった以上、送ってもらわないわけにもいかないだろう。荷物も重かったし、よかったと思うことにしようと千花は考えることにした。

車がゆっくりと走りだす。一樹に言わせると、〝いいエンジン音を響かせて〟といったところか。そんな話を思い出した千花は、ふふっと笑みをこぼした。


「一樹さんは、どうしてあんなところにいたんですか?」


今日は平日。一般的な会社なら仕事だろう。
経営者の一樹ならば、それはあまり関係ないのかもしれないが。
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