お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「バレンタインデー用のイルミネーションの仕事があってね」
バレンタインデーは二週間後に迫っている。
一樹の会社は空間をプロデュースする会社だが、そういった仕事のことを言うのかと千花はひとり納得して何度も頷いた。
「千花ちゃんに謝りたいと思ってたから、あそこで会えてよかったよ」
「なにを謝るんですか?」
そう聞いてから、もしかしてあれかな?と千花が見当をつける。
「修矢に隠し子がいるんじゃないかって千花ちゃんが落ち込んでたとき、違うよって言ってあげなかったこと」
「そのことならもういいですから」
誤解が解け、修矢とめでたく気持ちを通い合わせることができたのだから。過去のことをいつまでも恨めしげに考えていたところで埒が明かない。
「そう? まぁ、ケンカは恋のスパイスって言うしね。ああいうすれ違いはあった方が恋も盛り上がるってもんだな」
まるで自分の手柄のようだ。ほんの数秒前に眉尻を下げて申し訳なさそうにしていた一樹は、千花のひと言に気をよくして、すぐに気持ちを切り替えた。