お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
マンションへ到着すると、一樹は部屋まで荷物を運んでくれると言う。いくら千花が大丈夫だと言っても聞かなかった。
地下駐車場に車を止め、一緒にエレベーターで上がる。玄関のドアを開けると、奥から「千花?」と修矢の声が聞こえてきた。
午後三時。千花は、そんな時間に修矢が帰っているとは思いもしなかった。
スリッパの音を立てて玄関に出迎えに来た修矢は、一樹が一緒にいることを知り、顔をしかめる。
「どうして兄貴がここに?」
「どうしてって、千花ちゃんと街で運命的な再会をしたからだよ」
いつもの調子で一樹が茶化す。
千花がクスッと笑う隣で、修矢は「ったく……」と呆れていた。
「とにかく上がれば?」
「せっかくの弟からの誘いだし、じゃあ、お茶でも一杯よばれてから帰るとするか」
一樹は意気揚々とリビングへ入っていった。
兄弟の間で温度差はあるが、なんだかんだ言って仲がいい。
千花がお茶を入れようとキッチンへ行こうとすると、「千花は座ってろ」と修矢が優しく肩に触れる。