お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

ふたりのやり取りを眺めていた一樹が目の前で笑う。

そこまでいちゃいちゃしたつもりは千花にはないが、一樹はなんとも言えないような複雑な表情だ。
ところが、「早いところ退散するに限るな」と言いながらも、腰を上げる気はさらさらない様子。一樹は、ソファの背もたれにゆったりと身体を預けた。

修矢がカップを三つテーブルに置くと、一樹は「千花ちゃん、コーヒー苦手なの?」と千花の手もとを覗き込む。
千花にはコーヒーではなく、ルイボスティなのだ。


「あ、いえ、コーヒーは今控えているんです」
「なんで? ……って、もしかして!」


千花のひと言で即座にピンときたのか、一樹はハッとしたような表情をしてから、これ以上ないくらいに目を見開いた。


「おめでたか!?」


声のトーンを上げ、目はおろか口まであんぐりだ。すぐさま立ち上がり、大きな足音を立てて千花の隣にドンと腰を下ろす。
千花が恥ずかしそうに頷くと、「そうかそうか」と言ってお腹に手を伸ばしてきた。

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