お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「千花、そんなに固くならないで。いつもの調子でいいのよ」
「そうだぞ。いつもの千花が一番だ」
「わ、わかってるけど緊張しちゃうよ……」
顔は引きつり、心なしか膝が震えた。
小上がりで引き戸を開け、幸助と美幸に続いて千花も中へ入る。
「お待たせしました、久城さん」
「いえいえ、こちらもたった今来たところですよ」
幸助が焼鳥屋一休で知り合ったという大病院の院長が手を上げるのが、千花の視界の隅の方に映った。なにしろ緊張している千花は、顔を上げることすらままならない。
「これはこれは、渡瀬さんから聞いている以上の娘さんだ。写真よりずっと美人さんですね」
「本当にかわいらしいお嬢さんね」
智弘とその妻と思われるやり取りに、千花は恐縮して首を小さく横に振る。心臓の音が耳の奥で大きく反響していた。
「さあさ、どうぞお座りください」
智弘に促され、千花たちが座布団をよけて正座をする。