お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

「謙遜なさることはないわ。修矢(しゅうや)もこのとおり、さっきから千花さんに目が釘付けですから」


そう言われて初めて、千花は美弥子の隣に座る主役へ吸い寄せられるように視線を投げかける。
が、いったん逸らした視線を超特急で戻した。二度見だ。


「えっ!?」


驚きのあまり千花の口から声が漏れる。口もとに手をあて、まつ毛を激しく動かした。

ピークを過ぎたわたせキッチンにたまに現れる、あの〝エリート〟だったのだ。何日か前にチラシの間違いを指摘され、傘を貸したお客。その彼だった。

目の端に捕らえていたときから、この華やかなオーラを自分は知っていると感じていた。どこかで触れたことのある感覚だと。


「千花、どうかしたの?」


隣から美幸に小声で聞かれ、「あ、ううん」とひとまず首を横に振る。

まさか彼が自分の見合い相手だったとは。エリートサラリーマンではない。小児外科医だったとは。

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