お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
小ぶりな白い襟にグレーのストライプシャツ。濃紺のネクタイが全体の印象をより引きしめる。洗練されたデザインのワイシャツや仕立てのいいスーツ姿で来店することから察するに、この近くで働いているのだろう。
人の目を引く容姿やセンスの良さから、エリートサラリーマンか会社経営をしている社長だろうと千花は勝手に思っていた。
(いつも思うけど、お弁当屋には似つかわしくない人よね)
この雨の中、傘を差さずに来たらしく肩先と髪の毛が濡れていた。しかも、それを拭おうともしない。
千花が彼だったら、大事な洋服が濡れちゃう!と慌てて拭くところだろう。
(もしかしてハンカチも持っていないのかな。それなら……)
引き出しからタオルを取り出し、千花は彼に差し出した。
「よかったら、これ使ってください」
男が驚いて目を見張る。
「風邪ひいちゃいますから、遠慮なさらずにどうぞ」