お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「うちはこの時間でも全然平気です。お店の閉店が八時ですから」
「そうだったな」
「千花? どちらさまー?」
なかなか戻らない千花の様子を見にきた美幸は、そこに修矢が立っていることに気づいて「あら!」と声のトーンを上げる。
「夜分に申し訳ありません。こんな時間に失礼だとは承知しておりますが、千花さんとの結婚を進めるにあたりご報告がまだだったので伺いました」
「まぁ、ご丁寧にすみません。さぁ、どうぞあがってください」
深々と頭を下げる修矢にしきりに恐縮した美幸は、玄関フロアにスリッパを揃えた。
「お邪魔します」
「主人もまもなく帰ってきますから」
パタパタとスリッパの音を響かせて、美幸が修矢をリビングへ通す。部屋にはほぼ完成したキーマカレーのスパイスの香りが立ち込めていた。
「お客様かい?」
キッチンで千花がコーヒーの準備をしているうちに幸助が帰宅した。ソファに座っているのが修矢だと気づき、ハッとして直立不動になる。