お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
立ち上がった修矢が「夜分遅くに恐れ入ります」と頭を下げると、幸助も「これはこれは!」と挨拶にならない言葉で腰を九十度に折り曲げた。
四人分のコーヒーをテーブルに運び、千花は幸助と美幸の前に修矢と並んで腰を下ろす。ふたりの間に人ひとり分のスペースが不自然に空くのは仕方のないことだろう。
「急なことで大変申し訳ありませんが、千花さんとの結婚を進めさせていただきたいと思っております」
無愛想でぶっきらぼうな修矢の唇から、なめらかに言葉が出てくる。
(そんなふうにしゃべれるんだ)
玄関先で美幸に対してもそうだったが、千花はつい横目で修矢を盗み見る。千花の前とでは、まるで態度が違う。
「こちらはもう大歓迎ですよ。二ヶ月のうちに式を挙げたいと伺いましたものですから、昨夜から家内とふたりで誰を招待しようかと話し合っておりましてね」
昨夜はずいぶん遅い時間まで盛り上がっていたようで、千花が眠りに着く頃になってもふたりの話し声が聞こえていた。