お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
◇◇◇
「ちょっと寄りたいところがある」
そう言う修矢に連れてこられたのは『エンジェル・ウィンストン』。女性なら誰でも憧れる世界的にも人気のジュエリーショップだった。
煌びやかな店は入るのもためらうくらいのシックな高級感に溢れ、千花ひとりでは店の前ですら足早に通り過ぎたくなる。
女性スタッフはみな一様に堂々として美しく、「いらっしゃいませ」と言われても目を合わせられない。修矢と一緒でなければ、千花はお客として扱ってももらえないだろう。
「あの、念のために聞きますが、ここには」
ショーケースの前に立ち止まった修矢の隣に並び、千花は爪先立ちをして彼に小さく耳打ちをした。
「婚約指輪以外になにがある?」
ほかにはないだろうと暗に含められ、千花は「そ、そうですよ、ね……」とすごすご退散する。踵をトンと突いた。
(でも、私にはちょっと高価すぎて……)