お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
ベルベット素材でできたプルシアンブルーのケースの上に並んだリングの数々を見て、つい千花が「わぁ!」と声を上げる。ブリリアントカットされたリングは、どのデザインもライトを浴びて眩しいほどに光っていた。
「こちらなんていかがでしょうか。エンジェル・ウィンストンでは定番のデザインですが、非常に人気の高い商品でございます」
向かいに座った女性が、白い手袋を着けてケースに伸びる。彼女が手に取ったのは、センターストーンを幾何学的なフレームが引き立てているリングだった。
ネイルアートはおろか、なんの手入れもしていない千花の指先。それを出すのが恥ずかしくて千花がもたもたしていると、修矢に「ほら、出して」と手を引っ張られた。
千花の左手薬指に指輪がはめられていく。しかも修矢の手で。
奥の部屋に案内されたときから緊張に胸を震わせていた千花は、その特別な行為に鼓動を弾ませる。指先を心音が伝ったか、修矢が軽く微笑んだように見えた。
「どうだ?」
「……素敵ですね」
そう言いながら、千花がほかの指輪が並んだケースに視線を泳がせると、修矢はそれに目ざとく気がついた。