お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
千花が何度作ってみても、決して同じ味にならないから不思議だ。
「はい、かしこまりました」
千花は受け答えをしてから、厨房に向かって「日替わり入りました!」と声を掛ける。
「では、五百五十円になります」
男に向かい直し、レジを操作する。そして、脇に置いていたチラシをお釣りと一緒に手渡した。
「メニューが一部変わるんです。秋向けのものを取り入れましたので、今度ぜひどうぞ」
二週間後には、夏場に加えていた冷メニューから秋の食材を使ったものへと変える予定である。
千花が写真と手書きを駆使して何日もかけて作成したチラシには、栗やイモ、菌茸類を取り入れたお弁当が色彩豊かに掲載されていた。
「間違えてるぞ」
チラシを凝視しながら、男が突然呟く。
「……はい?」
千花は小首を傾げて男の顔を見上げた。