お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
◇◇◇
「ありがとうございました。出来上がり次第、久城様にご連絡いたします」
スタッフ総出で見送られ、ふたりは外へ出た。すっかり陽は落ち、街は夜の顔に変わっている。
「修矢さん、ありがとうございました」
店の前にある階段を下りながら、千花は改めて修矢に頭を下げた。
「憧れのエンジェル・ウィンストンで指輪を買ってもらう日が――」
浮かれていたせいか、はたまた階段の段数を見誤ったか。千花は足を滑らせ、体勢を大きく崩す。
ところが次の瞬間には、修矢の腕の中。前のめりになったところで修矢に身体を強く引き寄せられ、なんとか転ぶのを免れた。間一髪だった。
「ったく、危なっかしいな。大丈夫か?」
左半身に感じた修矢の逞しさが、千花の鼓動を速める。うっかりドキッとしてしまい、顔まで熱くなった。