お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
当たり前だと言わんばかりの回答に言い返した千花の声は、広く高い空間に響いた。
キャリーバッグを引いてくれている修矢に続いてエレベーターに乗り込むと、そこもまた黒い壁がシックで洗練された空間だ。
見るところすべてがゴージャス。千花は口を半開きにしたまま、五階の修矢の部屋に辿り着いた。
シンプルだけどモダンなダークグレーの玄関扉を開くと、そこに十畳はあろうかと思われる広い玄関フロアが現れる。淡いオレンジのダウンライトが、ワックスの効いたライトブラウンのフロアをやわらかく照らしていた。
そこだけで一般家庭のリビングとして使えそうな気がする。
通路を抜けて本物のリビングが現れると、千花は胸の奥深くからため息を漏らした。そうせずにはいられなかった。
「すごいですね……」
そんな感想は陳腐にすら思える。
(二十畳? 三十畳? ううん、もしかしたら四十畳くらいあるのかもしれない)
もはや何畳あるのかもわからないくらい広い部屋は、正面に高い天井までの大きな窓が何枚も連なり、その向こうにはこれまた広いインナーバルコニーが見えた。