お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

「なななっ、なにを言ってるんですか! 一緒でいいわけがないじゃないですか。私たち、まだ――」
「婚約指輪も注文したし、両親の了解も得ている。つまり立派なフィアンセだ」


修矢にいきなり間合いを詰められたため、遠ざかろうとした千花が背中をのけ反らせる。ところが自分の上体を支えるだけの腹筋がなかったか、千花の身体はそのまま美しくベッドメイクされたカバーの上に倒れていった。

(ひゃあっ!)

心で悲鳴を上げた瞬間、修矢の腕が千花の腰に巻かれ、強く彼に引き寄せられる。しかしそれでも支えきれず、ふたり揃ってベッドへ倒れ込んだ。

ポフッという音を立てたあと、心地いいスプリングを背中に感じる。きっとこのマットレスも世界最高基準のものなんだろうなぁと千花が呑気なことを考えるのは、とんでもない事態に陥っているせいだろう。

腰に回された修矢の腕はそのまま。もういっぽうの肘を千花の顔の脇に突いているせいで、思いのほか顔が近い。

(お願いだから早く起きて……!)

そう願いながらも、千花は身じろぎひとつできない。それはどことなく甘い眼差しをした修矢が、真っすぐに千花を見下ろしているからだろう。おかげで心臓は早鐘だ。

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