年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。

しゃぶしゃぶはお出汁の旨味が半端なく出ていて、肉も野菜も日常では味わえないくらいに高級で甘さがあり、シメの雑炊に至っては、残すのが惜しいくらいに味がしみ込んでて美味しかった。



「やっと満たされた」


店を出ながらそう呟いた輝は、お昼もそこそこにずっと仕事をしていたと言う。


「そうだったの。大変ね…」


労う気持ちからそう言うと、私を見下ろす彼が眉尻を下げ、「ん…」と頷く。


「まあでも、それが俺の仕事だから」


さっと頭を切り替えて淡々と自分の責務を理解しこなしていく。
だから、輝はどんな場所に行っても重宝されて、大任を任されてしまうのかもしれない。


（私…こんな輝の役に立てる人間なのかな）


付き合ってきた三年余りの日々を思い返して目を伏せる。


私はいつも彼に癒されてばかりで、甘えてばかりだったんじゃないのか。
年上なのに年下みたいに甘えさせてもらって、彼の神経を余計に使わせてきたんじゃないのか。

もっと彼を甘えさせて、癒せる人間でいなくてはいけなかったんじゃないのか。
こんな自分では駄目で、もっと何処かを改善していくべきなんじゃないのか。