年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
もしかして別れ話?と思いつつも付いて行くしかない。

店に入った私達はカフェオレとブラックコーヒーを注文し、壁際の隅っこにあるテーブル席へと着席した。


椅子に座るなり輝はコーヒーに口を付け、ゴクゴクと立て続けに飲んでコップを置く。
その表情は固くて、何を言い出す気だろうか…と戸惑った。



「……俺、今まで言ってこなかったけど」


ぐっと紙コップを握った輝が話し始める。その口元がぎゅっと噛み締められるのを見つめ、私もぐっと奥歯を噛んだ。


「……実は俺の両親、結婚してないんだ」


諦めたように呟く輝に目を向け、「え?」と声を発した。


「俺の父親は俺のことを一応認知はしてる。だけど、同一の戸籍に入ったことはないし、だから俺は、世間で言うところの『婚外子』という立場になるんだ」


そう言い切ると再びコーヒーを飲み干す輝。
空になったコップを置くとぎゅっと握り締め、はぁ…っと短い息を吐き出した。


「父親の名前は『都築光太郎』。俺が前に勤めていた、都築商事の代表取締役社長だ」


呆れた声で伝えた輝は、眉間に皺を寄せる。

< 102 / 194 >

この作品をシェア

pagetop