年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
家は築二十年が経つ二階建て。
そのキッチンの中に入ると、楕円形テーブルの上にはミカンを盛ったカゴが一つポンと置いてあり、側には母が編んだレース編みの花瓶敷きと、クリスマスらしくポインセチアの鉢植えが置いてあった。


それを見つめながら小さく息を吐き出し、マムらしいな…と思う。
英語が好きな私は、いつも母のことを「マム」と呼んでいた。
父は普通に「お父さん」。
「ダディ」って感じじゃないし、どちらかと言うと、コテコテの関西人みたいな雰囲気があるから。


視線を冷蔵庫に向けて進み、ドアを開けると、可愛いケーキが目に飛び込んできた。


「わぁ…美味しそう」


小さくて丸い一人分のケーキ。
ちゃんとデコレーションもしてあって、イチゴとチョコレートがトッピングしてある。


それを取り出して、しげしげと眺める。
可愛く作られた母のケーキは、毎年食べるのが惜しいくらいによく出来ている。


「そう言えば、以前はよく一緒に作ったっけ」


手先の器用な母は、手芸も料理もお菓子作りも得意だ。
おまけに掃除が大好きで、家中汚れた所がないくらいに磨き上げている。

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