年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
(何を言っても嘘っぽく聞こえるんじゃないのか。あの男がどれだけ最悪でも、俺から手を引いたと証明しない限り、説得力はないんじゃないのか?)


そもそも、俺に望美を幸せにすることが出来るのか?

追ったところで、先の約束をしたところで、望美を本当に幸せにすることが出来るんだろうか。

家族の温もりも親の愛情も知らずに育ったような俺に、望美を愛し続けることが出来るのか……?



それはずっと考えてきたことだ。
望美に対する気持ちが増せば増すほど、同じように踏み込むのも恐くなった。


(望美を幸せにしたい。でも、どうすればいいのかが分からない…)


幸せというものに縁遠い生活を送り続けてきたからだろう。
唯一の肉親にも、愛を教わらなかった所為だろう。


(情の掛け方が分からない。望美を失いたくはないが、自分でいいのかどうかが自信ない……)


ただ、他の女とどうこうとかは考えていない。
この先もずっと、隣にいるのは望美がいいとは思っている。


(……けれど、望美は俺と別れると決めてるみたいだった……)


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