年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
事の次第を話せば、縁談の相手と結婚した方がいいのでは?と問われてしまうんじゃないのか。
親のことや生い立ちも話せば、ますます諦めてくれ…と頼まれるんじゃないのか。


(それよりも先ずは、あいつに話を着けて、きっちりと縁談を断ってからの方がいいのでは……)


そう迷いながら店を出て、ぐるりと一周見回したが__


(……当たり前だよな。追っても来ないような男をずっと待ってる訳ないよな)


地面を見つめ、はぁ…と溜息が漏れだす。
歩き始めて間もなくチラチラと小雪が降り始め、空を見上げたまま空虚な思いを胸に、一人寂しさを我慢した__。


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