年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
家には確かに借金があり、自宅を売る可能性もあるとは言われたが、売却するかどうかまでは、まだ決まってもいない…と明かされたんだ。



「何処かでサボって遊んでるだけじゃないですか?明日にはケロッとして出社してきますよ」


心配には及びません、と相手は笑っている。
けれど、俺はそんな風には思えず。


「なぁ、悪いんだけど望美に連絡をしてくれないか?俺はどうも着信拒否されてるみたいで、電話もラインも繋がらないんだ」

「ええっ?マジっすか?」


呆れた姉だ…と弟は驚く。けれど、直ぐに連絡をしてみます、と請け負い、居場所が分かったら折り返し連絡をします、と言って電話を切ろうとした。


「仕事中に申し訳ない。頼むよ」


通話を終えると、俺は祈る様な気持ちでオフィスビルを飛び出した。望美が行きそうな場所を探して回ろうと決め、ついでに上司にも連絡を入れた。



「…おお、何だ?」


一課の課長を務める城島さんは電話に出ると、愛想のいい声を返してくる。


「すみませんけど、今日は俺、病欠ってことにして貰えませんか?」

「ええ?!何だって?!」


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