年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
銀行に勤めている頃は、毎日お金のことばかりでウンザリだった。
私がいた窓口に来るお客様は、誰も彼もがお金を融資して欲しい人達ばかりで嫌だった。


しかも、数万とか数十万とかじゃない。
少なくとも百万から上の金額だったからヒヤヒヤした。

そして、勿論だけどお客様は外国の方が多くて、私は電話でもその相談を受けていたから大変だった。


でも、給与はそれなりに高かった。
初任給の明細を貰った時、自分の仕事にやり甲斐を感じたのも事実だ。


「……だから、輝の気持ちもわかる」


彼が仕事熱心なのは当たり前。
上部が彼の経歴を考慮し、それなりに高い給与を支払っているんだ。

そうでなければ、国外や国内の旅行代を、彼がポンと支払える筈がない。
その上、輝の着ているスーツはいつもフルオーダーメイドで、生地だってネクタイだって、私が見ても一流品だ。


「彼はそのうち、あの部署の課長とかにもなれそうな人なんだもん。若いうちにいっぱい働いて、経験を積むのは大切だよね」


理解を示しながら、『おやすみ』と入ってくる輝の文字に目を通し、『おやすみなさい』と返事を送る。

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