年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
(何思い出してるんだろう。今更こんなこと思い出しても仕様がないのに…)


もう自分から輝にはバイバイを告げた。
彼の腕には戻れないと思い、散々泣き暮らして週末を過ごしたんじゃないの。


(あーもうっ、また涙溢れてくるし…)


いつになったら、きちんと失恋を受け入れられるんだろう。
もう輝のところへは戻れないんだというのを覚悟して、前に踏み出して行かなきゃならないのに。


(三年以上も付き合ったら、忘れるのも同じくらい掛かるかな)


どれだけ拗らせるつもり…と我ながら呆れる。
でも、きっとどんなに時間が過ぎ去っても、彼と過ごしてきた日々は私の中から消えていかない様な気もしてくる__。


「はぁぁ…」


息を吐く側から涙が溢れ落ちる。
こんな所にいつまで居ても仕方ないし、部屋も早く探さないと。


通勤バッグの中を開け、ハンドタオルを取り出そうとした。
すると、タイミング良くスマホが揺れだして、ビクッと体が固まる。


「……馬鹿ね、輝じゃないって」


自分に言い聞かせて取り出して見ると相手は弟の郁だ。


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