年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
ぎゅっと手を握りしめ、泣き出しそうになるのを我慢。
もう何も考えないようにしようと思った瞬間、ふわっと体が温もった。


(えっ!?)


ビクン!と背筋を伸ばして緊張した。
痴漢!?と焦るが、こんな朝っぱらから!?


「…良かった。見つけた……」


背後から聞こえる声に驚いて固まる。
輝?!と思うが振り向けず、どうして?と頭の中が混乱してくる。


(どうして……此処に……)


呟きたいけど声にはならず、唇を閉ざしたまま両手で口を覆う。
輝は私を抱いてる腕を解くと隣に座り直し、ぎゅっと肩を抱き寄せてきた。


「出勤したら望美が休みだと聞かされたんだ。インフルエンザだと教えられたけど、なんか信じれなくて郁君に電話した」

「えっ!?郁?」


ハッとさっきの電話を思い出す。まさか郁が私の居場所を輝に?


「多分此処だろうなと思って移動してたところだった。良かった。思ってた通りで」


ぎゅっと両手で肩を抱き締める輝。
その腕の力に胸が弾ませながらも、私は体を離そうと努力する。


「やめて」

「どうして」

「だって私、輝とはもう…」


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