年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
唖然とする私に彼が振り返る。
ふわっと微笑むからカッと顔が熱くなり、一体どんな表情をすればいいの?と焦った。


「輝君」


慣れ親しんだ感じで名前を呼ぶ相手に彼が振り向く。
私もつられて相手を見返し、その口元が動くのを凝視した。


「縁談を断るというのがどういう意味か、君は勿論分かって言ってるんだろうな」

「はい、勿論存じています」


その上でお願いしています…と言うと、相手の男性は口元に手をやり、うーんと考え込んだ。
その隣にいる女性は苦虫を噛んだ様な表情をしていて、私はごくっ…と唾を飲み込む。


「……まあ、俺はね」


唇を開いた相手は、若干暗めな声を発した。
輝はそんな相手に目を向けたまま、何も言わずに見つめ続けている。

私はどんな言葉が出るのだろうと思ってドキドキして、もしも駄目だと言われたら、その次は何をすればいいんだろうか…と思い悩んだ。


「俺は別に、どうでもいいんだがね……」


あんまり興味も無さそうに言われ、つい、ええっ?と思ってしまう。相手の女性もそれには呆れた様な表情を浮かべ、お父様?と険しい顔つきで見返した。


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