年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
そう言うとキッと前を向く輝。きちんと父と母に対峙して、お願いします…と項垂れた。


「望美さんとの結婚をどうか認めて下さい!」


私は項垂れる彼の隣で、暫く呆然としたまま固まっていた。
すっかり自分が蚊帳の外に追いやられている様な気分もしていたけれど、ゴホンと咳を払う郁の声にハッとし、慌てて自分も頭を下げた。


「私からもお願いします!どうか、輝の言うビジネス案に乗ってあげて下さい!
お父さんの大事な人を守っていける仕事だと思うし、上手くいけば、この家も手放さなくても良くなると思うの。
この家も家族も守ってあげて欲しい。そして、私達二人の結婚も、どうか認めて下さい!」


私、プロポーズはまだされてないけど…と不貞腐れつつも神妙に頭を下げ、ぎゅっと目を瞑って、お願い…と祈る。

父はまだ呆然としていたけれど、母や私達、最後には郁にまで頭を下げられてしまい、とうとう城を崩された大将みたいに困惑しだした。


「……おいおい、俺がそんなに頑固に見えるのか?」


俺は人がいいだけの人間だぞ!?と言いだし、そんな自分が偉そうに断われる筈がないじゃないか…と狼狽える。


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