年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
「俺の方こそ、こんないい話を持って来てれて有難いと礼を言いたいよ。望美のことも君に任せるし、どうか娘を幸せにしてやって欲しいと願いたいね」


自分達夫婦のように危機があっても助け合っていくんだぞ、とそれこそ苦言を呈され、私と輝は顔を見合わせた。


「「はいっ!」」


二人で一緒に返事をして笑い合う。
まだプロポーズもされていなかったのに親にも結婚を認めてもらい、私は複雑な心境に陥りながら、それでも安心して(良かった…)と安堵した。


私達は、その後すっかり冷めきった紅茶を淹れ直してもらい皆で飲んだ。

母は私達が帰ったら、やっぱり家を手放さない方向で考え直そうと決めたと語り、それが現実になれそうで幸せ…と口にする。


「だって、孫が出来た時には、家はやっぱり広いほうがいいでしょ。郁の彼女にもちゃんとした親だと思われたいし、それにはやっぱり家がなくちゃね」


あの会社の二階じゃ倉庫みたいだもん、と笑い飛ばす母を見る輝の目は切なそうだ。
何処かで自分の母親と比べているような気もして、私はそ…と彼の袖に手を掛けた。


「輝…」


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