年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
母の生き甲斐は、俺じゃなくてあいつなんだ…とこぼす輝の目はとても切なそうに見える。
求めても還らない愛情に飢えて、輝はずっと乾ききってきたんだ。でも……


「それでも…お母さんを一人にするなんて…」

「いいんだっ!たまにはっ!」


大きな声で私の言葉を制すると、輝はぎゅっと私を抱き締めた。


「母は俺なんて必要じゃないんだ。だから今ここで離れても後悔なんてしないし、むしろ俺が居ない方が自分の勝手が出来ると思って喜んでると思うよ。
それに、俺には望美しか要らないんだ。望美さえ側に居てくれたら、他の者からの愛情なんて欲しくもない…!」


ぎゅうっと力を込めてくる相手に胸が痛い。
輝が求めるものが愛情なのか何なのか、私まで分からず困惑する__。



「輝…」


そう言われて嬉しい気持ちも確かにある。
この人を守って愛して、共に気持ちを温め合いたいという思いも湧いてくる。


「…俺、望美の声を聞いてるとホッとするんだ。心底から安堵して温かさを感じて…こんなの、他の誰からも感じたことがないし、他の誰からも受け取りたいとは思ったこともない。
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