年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
その様子を見てるととても不倫をしてる人には思えず、どうしてこんなか弱そうな人が…と、返って不思議に思ってしまった。


「良かった。戻ってきてくれて」


お母さんは立ち上がると輝と私の方に向き直り、あら…と呟き、じっと私のことを見つめ直した。


「母さんに紹介しようと思って連れてきたんだ。小島望美さん。俺が三年以上前から付き合ってる女性」


輝は私の腰に手を回すと、自分の斜め前に立たせて、ぎゅっと腕に力を込める。


「は…初めまして」


頭を下げて上げるとお母さんは無表情でいて、あまり興味も無かったのか、「そう…」とだけ呟いて座り直そうとした。


「あ…っ」

「母さん!」


咄嗟に側を離れた輝がフラつくお母さんを支える。
「また何も食べてないのか?」と訊くとお母さんは黙って頷き、「だって、輝も居なくなっちゃったんだもん」と拗ねた子供の様な表情に変わった。


「…ったくもう、仕様がねぇな」


乱暴な言い方をすると座らせ、私のところにやって来る輝。

驚いて目を丸くしている私に笑いかけると、これが母さんの日常なんだ…と教え、何か作ってくるまで此処に居て欲しい…と願った。


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