年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
「私が作ろうか?」


そんなにいい物は作れないと思うけど…と言うと、彼は大丈夫、と微笑んで断る。


「多分、ハウスキーパーさんが冷蔵庫に何か作って入れてる筈だから。でないと母さんは自分では何も作らないし、食べようともしない人だからな」


それを適当に見繕ってくると言うとリビングを出て行く輝。
私は急にお母さんと二人だけにされてしまい、どう間を持たせればいいの…と困惑しだす。



「ねえ…」


囁く声に反応して振り返ると、輝のお母さんが私の方を向いて手招きをした。


「こっちに来て話さない?」


誘われて断るのもどうかあると思い頷いて近付く。
彼のお母さんは側に来た私を見遣ると微笑み、可愛い服ね…と言いながらスカートに手を伸ばした。


「あっ、これは…」


昨日輝がショップで選んでくれた服だ。
お母さんはよく見せて…と言うと私の手を引き寄せ、自分の座るソファへと掛けさせた。


「私がいつも行くブランドのお店にもこれと同じデザインのがあったわ。
自分にもしも娘がいたら、こんなの着せてみたいなと思って、しみじみ眺めていたものよ」


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