年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
「……なんだ、どうした?」
背後からかけられた声にビクッとしてスマホを下ろす。
振り返ると上司の城島さんがニヤついていて、彼女に電話か?と訊いてきた。
「今からデートか?いいな。若いもんは」
元気がいいと羨ましがられ、そんなんじゃないですよ…と言いながらスマホをポケットに仕舞う。
城島さんは俺の態度を見て呆れ、いいのか?と逆に訊き返してきた。
「三日ぶりの日本だろ。顔くらい見せてやれよ」
枯れてんな、と呟かれて流石に少しムッとくる。
あんたが側にいて、望美に『会おう』とか打てる訳がない。
「いいんですよ。もう遅いし、向こうも仕事納めで疲れてるだろうから」
気持ちとは逆に望美を思いやる言葉を吐いた。
城島さんは俺の言ったことを受けて、そうか…と思い出し、やっと休みか…と安堵した。
「大型連休様様だな」
うーんと大きく背伸びをし、俺はその姿を見て「お疲れ様です」と挨拶した。
「今年も一年お世話になりました」
頭を下げると…
「世話になってるのはこっちの方だよ。筒井君が一緒に出張へ行ってくれると、何かと楽ちんで助かるから」