年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
ドギマギしながら挨拶を返し、どうしてこっちにまで話しかけてくるの!?と焦る。
だけど、彼女は私と違って余裕のある感じで、「輝さんと待ち合わせ?」と訊いてきた。


「えっ…あ、はい…」


でも、貴女がいたから側には行く勇気が出なかったのよ、と胸の中で呟き、栗色に見える眼差しを見返す。
彼女は今朝も盛ったフルアイメイクの目元を細めて微笑み、「彼がお待ちかねよ」とさり気なく後ろを振り返った。


「都築(つづき)商事の御曹司を待たせるとか凄いわね。…貴女って、一体何処の会社のお嬢さま?」


小馬鹿にした様な感じで問われ、ムッとすると同時に、えっ?と疑問も湧いた。


「…あの」

「私なんて先日のお見合いの席では、お待たせしてはいけないと言われて、待ち合わせの場所で小一時間以上も前から待機していたのに」


衝撃的な事実を口にする彼女を呆然と見る。
誰のことを言ってるの?と思ったけれど、多分、輝のことに間違いないだろうと確信して口籠った。


(都築商事って何?何処かで聞いたことのある社名だけど…)


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