年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
残念そうな声に胸が痛む。でも頭を直ぐに切り換えたらしい相手は、「それじゃあ早速ですが、本題に入りましょう」と呼び出した理由を話しだした。


「……実は先日、とある取引先の女性から貴女のことを伺いましてね。旅行先のホテルで、貴女が輝と一緒に居るところを偶然お会いした、と聞いたんですよ」


カップを持ち上げ、紅茶を口に含んだ相手は、飲み込んだ後にそう切り出した。
私は直ぐにあの女性のことだと頭に浮かび、顔を俯けたままでゴクン…と唾を飲み込んだ。


「驚きましてね。輝からそんな話を聞いたことが、今まで一度もなかったものですから」


落ち着いた口調で笑いかける。
唇の先では驚いたと言っているが、そんな風には受け取れないくらい、穏やかで何処かクールな口ぶりだ。


「つかぬ事をお訊きしますが」


手を組みながら身体を前のめりにした相手は、前置きした後でこう続けた。


「輝との付き合いは長いんですか?良ければ、いつ頃からお付き合いをされているのか、詳しく伺わせて頂きたいのですが」


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