年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。
(あの時、望美は何も言わなかったが、多分頭の中では、いろいろと考えていたに違いない__)


余計なことを言わないし、聞こうとしないのが彼女の取り柄だ。
実際は俺も何も聞かれない方が楽だし、その方が動き易いこともある。


しかし、旅行中に出会った相手が、あの男に望美と一緒だったことを告げていないという確証は何処にもない。現に翌朝ロビーで会った時にニコッと微笑みながら、お待ち合わせ?と聞いてきて、そして……


「貴方のお父様は、あの女性のことをご存じないのかしら?」


自分とのお見合いをセッティングしてくるくらいですものね、と言いたげな表情で囁き、「ご機嫌よう」と笑いながら去って行った。



俺はその後ろ姿を見つめながら一抹の不安を感じた。

万が一、あいつの耳に望美のことが入れば、必ず邪魔をしてくるだろうと思い、残りの休みはあいつの居場所を調べ上げ、きっちり話を着けておく必要があると考えた。


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