年下御曹司の、甘い提案が聞きたくて。

（俺はこれまで、あいつについて話すこともなかったんだがな…）


でも、そうしておかなければ、あの男の考えることだ。
今度は望美に近づいて、彼女を排除しようと掛かるかもしれない。

そうなると彼女は、ひょっとすると自分が身を引こうなんて考え、俺に別れを告げてくるかもしれない。


（そんなこと……させるものか）


あの男は常に自分の利益しか考えてないんだ。
そんな相手がいくら自分の戸籍上の父親でも、俺はこの世の中であいつを一番憎み、軽蔑し、二度と顔も見たくないと思っているくらいに毛嫌って生きている。


（何でも自分の思い通りに動かせると思うなよ）


ぎりっと奥歯を噛んで手を握りしめる。
自分の意思を行動と態度で示してやると誓い、目線下に漂う雲の波を見遣った。