しせんをわかつ
『……よぅ』
白い歯を、チラと見せて、少し、はにかんだような、少し、泣いているような、顔をして、彼は、僕に近付いてきた。
『…思ったより…元気そうだな』
僕の右肩を、ポンと叩いて、椅子に座った。
『……お茶、いれるね。』
琴が、部屋の端の、給湯台に向かった。
『僕は、仁科 遼治。同じサッカー部で、僕は部長だけど……』
ゆっくりと、眼を見て話す彼には、覚えはなくても、会っていた人だというのは、すぐ感じた。
『今日は、たんなる…「トモダチ」として会いに来たんだ』
そう言って、僕の傍らに、薄汚れたサッカーボールを置いた。
それから、凌治は、僕が退院するまで、ほぼ毎日、その白い病室に、訪れた。
そして、三人で過ごした。
それは、今も、そうだった。