赤いジャケット
見るのが辛くて、気づかれないように背を向ける。

きみのカノジョは、近場の居酒屋へ行くと言って、ライブハウスから出て行く。
きみは物販の一番奥の椅子にもたれたままだった。
友達が気を利かせたのか、その隣の椅子にあたしを座らせてくれた。

あたしが 高校生が眠たい授業の居眠りのときのような姿勢で、
椅子に座りながら、机に伸ばした腕に、顔をもたれたのは、
少しだけ、少しだけ、あと少しだけ、
あたしの隣に居て欲しくて、

優しいきみの性格を知ってるから、
そこから、あたしの隣から出れないようにしたかったから。

ずっとそんなことしたら、迷惑だって分かってるから、
初めて聴くバンドの今の1曲分だけ。
あたしは きみの隣で そのまま、

決めてたリミット、一曲分が終わって、
あたしは きみが移動しやすいように、立って、ライブを聴いてたけど、

きみはしばらく 隣にいたからうれしかった。
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