3秒後、きみと恋がはじまる。
「桃ちゃん、久しぶり」
にっこりと、余裕のある表情で笑う雪音ちゃんに、自分の子供みたいな嫉妬心が恥ずかしくなる。
だってふたりはどう見たってお似合いで、女の子が嫌いな茜くんが雪音ちゃんとは普通に喋っていて。
例えば雪音ちゃんが「茜くん!」って話しかけても、私の時みたいに面倒くさそうな顔はしないんだろうなって。
そう思ったら、少し切なかった。
「ふ、ふたりで帰るの…?」
「うん。私たち、一緒に塾の体験に行くことにしたんだよね」
雪音ちゃんがにっこり笑って茜くんを見ると、茜くんも「ああ」と頷いた。
「私が引っ越したばかりで塾を探してたら、有村くんもそろそろ塾に通おうと思ってたらしくて。
有村くん、今まで塾に行かずに成績トップだったなんて尊敬しちゃうよね」
「あ……そう、だね」
ふたりで、同じ塾に行くんだ。
なんだかすごく嫌な予感がして、だけど私は塾なんて行けないし…。
こんなに勉強嫌いな私が行くって言ったら、茜くん目当てなのがバレバレで。
本当に勉強しに行こうとしているふたりにそう思われるのが恥ずかしい。