3秒後、きみと恋がはじまる。
「…あ、もしかして有村くんに会いに来たところだった?ごめんね、邪魔だったかな。
でも、早く行かないと遅刻しちゃうかもしれなくて」
そう言って私を見つめる雪音ちゃんに、へらりと笑って「大丈夫!気にしないで!頑張ってね!」と手を振った。
茜くんはただ黙って少し私を見て、それから雪音ちゃんとふたりで階段を降りて行く。
「……あかね、くん」
誰もいなくなった階段で、小さな声でつぶやいたら、廊下に反響して少し響いた私の声。
だけど誰にも届かない。
今日ね、体育でドッジボールをして3人当てたんだ。
数学の授業で、この前のテストの時に茜くんが教えてくれたところ当てられて、ちゃんと答えられたんだ。
コンビニの新商品の、チョコミントがすごく美味しかったんだ。
話そうとしていたことはそんな何でもない話で、だからいつも茜くんは「へえ」とか「そう」としか答えてくれないんだけれど。
それでも私の話、ちゃんと聞いてくれてるの、嬉しかったんだ。