3秒後、きみと恋がはじまる。



茜くんに、会えたのに。
会えたのに全然、嬉しくない。


他の女の子と一緒に塾に行く茜くんに会えたって、全然嬉しくない……。



私がこんな性格の悪いことを思っているのに、それなのに、雪音ちゃんはいつも余裕で。

それで、雪音ちゃんの気持ちにも、私が茜くんに話しかけるたびに複雑な表情をする雪音ちゃんにも、私は気付いてしまっていた。



雪音ちゃんは私と違って頭が良くて、茜くんとも、もっと茜くんの楽しめる話ができるのだろう。




「嫌だ……」



嫌だよ、私。

ふたりが仲良くなって、好きになって、付き合っちゃったりしたら。


茜くんの隣にいるのは私がいい。

茜くんの眉を下げて呆れた顔も、ふっと笑う声も、目を逸らして、少し照れたような顔も。


全部全部、見るのは私がいいのに……。




< 104 / 265 >

この作品をシェア

pagetop