3秒後、きみと恋がはじまる。
茜くんに、会えたのに。
会えたのに全然、嬉しくない。
他の女の子と一緒に塾に行く茜くんに会えたって、全然嬉しくない……。
私がこんな性格の悪いことを思っているのに、それなのに、雪音ちゃんはいつも余裕で。
それで、雪音ちゃんの気持ちにも、私が茜くんに話しかけるたびに複雑な表情をする雪音ちゃんにも、私は気付いてしまっていた。
雪音ちゃんは私と違って頭が良くて、茜くんとも、もっと茜くんの楽しめる話ができるのだろう。
「嫌だ……」
嫌だよ、私。
ふたりが仲良くなって、好きになって、付き合っちゃったりしたら。
茜くんの隣にいるのは私がいい。
茜くんの眉を下げて呆れた顔も、ふっと笑う声も、目を逸らして、少し照れたような顔も。
全部全部、見るのは私がいいのに……。